もしも過去に戻ることができるなら、私はやり直すと思う。
私の初恋は小学生の時です。
彼とは2年生の頃同じクラスに。
勉強もスポーツも得意で、誰にでも分け隔てなく接することができる、クラスの人気者でした。
私は人と接することが苦手で、どちらかというと大人しいタイプ。
クラスでは目立たない存在だったのではないでしょうか。
特に男の子と話をするのは苦手でした。
そんな彼と、ある日席替えで隣になった時のこと。
朝や帰りのあいさつはもちろん、「何してるの?」「俺は昨日○○に行ったんだよ」などと、彼は私によく話しかけてくれます。
男の子と接するのが苦手だった私も、彼が毎日話しかけてくれることが嬉しくなっていきました。
休み時間は一緒にドッジボールをしたり、給食を食べるのが遅い私のパンを食べるのを手伝ってくれたり…。
日に日に距離は近づいていきます。
そんな彼とはその後も何度かクラスが同じになり、ついに6年生を迎えました。
その頃には、自分の気持ちに気付いていた私。
「彼と同じクラスになれますように」と、始業式の日の朝を迎えます。
学校へ行くと、ちょうど靴箱で彼と遭遇。
「おはよ。また一緒のクラスだって!やった!」と屈託のない笑顔で私に言ってくる彼。
彼は私の気持ちは知りません。
そんな笑顔を見せられ私はドキドキが止まらず、「そうなんだ!」と答えるのが精一杯でした。
彼は6年生でも変わらずクラスのリーダー。
私はいつかこの気持ちを彼に伝えようと思ってはいたのですが、「私なんかじゃダメだろうな」「振られるに決まっている」と思い、中々伝えられません。
今の関係が壊れるのも嫌でした。
そして時は経ち、大イベントの修学旅行がやってきます。
ドキドキワクワクの自由行動のグループ決め。
まず男女分かれて好きなグループになり、後は先生が男女のグループをくっつけるのですが…。
なんと偶然彼と同じグループに!
「俺らよく一緒になるな!」と笑う彼。
そして舞い上がる私。
修学旅行当日が楽しみすぎて、毎日浮かれていたのは言うまでもありません。
こうして、待ちに待った修学旅行の日を迎えるのでした。
私たちは新幹線で九州方面へ向かいます。
彼と一緒に回れるグループ行動が楽しみすぎて、気が気ではありません。
一緒にいた友人にも心配されるほど、緊張していたようでした。
グループでの自由行動では、町を散策したり、色々な施設へ行ったり、自分たちで決めたルートで先生のいる集合場所まで行きます。
「こっちの道で合ってる?」「このアイス美味しいね」などみんなで話をしながら、楽しい時間を過ごしていました。
そしてみんなで路面電車に乗った時のこと。
結構席が埋まっていたので、座れる人は座り、私と彼は立っていました。
彼と近くにいるだけで緊張している私に、彼はいつも通り話しかけます。
「疲れたねー。」「あそこ楽しかったね」などとたわいもない話ですが、それだけで満たされる私。
そんな時何を思ったのか、「今しかないんじゃないか」と、私は彼に自分の気持ちを伝えます。
「私、○○君のことずっと好きなんだよ。」
このひと言を言うので精一杯でした。
彼は驚いた表情で、「ええーーーー!早く言ってよ。」と笑顔で笑います。
私が「えっ!?」と言うと、「俺もずっと好きだったんだけど。」と少し照れ臭そうに言いました。
「俺嫌われてるのかなあと思ってたけど、違ったんだあ!良かったー。」とため息をつく彼。
緊張してうまくしゃべれない私を見て、嫌われていると思っていたようです。
つい私も笑顔に。
私がずっと胸に秘めていた気持ちを彼も持っていたのだと思うと、なんだか嬉しいような恥ずかしいような気持ちでいっぱいになりました。
この時、お互いの気持ちを確認できたことで距離もより近づきましたが、小学生なので付き合うとかそういう感じではなく、卒業まで色々な話をしいつも通り過ごしました。
そんな彼とは、中学校が離れます。
卒業の日、「もっと一緒にいられたらよかった。もっと仲良くなりたいって思ってるときに卒業だから。」という彼。
「私ももっと仲良くなりたかった。」
私と彼は「またね」とだけ言い、それぞれの道を歩きます。
卒業後、彼とは全く会うことはありませんでした。
私は中学・高校でそれぞれ新しい恋もいくつかしましたが、彼のことは一度も忘れたことはありません。
私はその後今の夫と出会い、結婚しました。
そんなある日、私は買い物に来ていたショッピングモールで彼にばったりと会うのです。
はじめに気付いたのは彼の方でした。
「もしかして○○さん?」
誰だろうと思い顔をよく見ると、そこにあったのは昔と変わらないあの笑顔。
すぐに彼だと分かりました。
「え、○○くん!?」
嬉しくてつい大きな声が出ます。
「久しぶりだね、何年振り!?」「今何してるの?」などと、お互いの近況報告をしました。
もちろん結婚をしたことも伝えます。
「結婚おめでとう。こんな時に言うのもなんだけど…。もし中学が同じだったら将来が変わってたかなとか、ずっと考えてた。もっとグイグイいっとけばよかったかな。今更言っても遅いんだけどね。」
私は彼の言葉に、どうしようもない気持ちになりました。
黙ってうなずくことしかできませんでした。
私はその後3人の子どもにも恵まれ、優しい夫と家族5人で楽しく過ごしています。
彼とはそれっきり会っておらず、何をしているのか、結婚しているのかも知りません。
しかし、ふとした時に今でも彼のことを思い出します。
もしも過去に戻るとするなら、私は彼と出会う小学生の頃に戻るでしょう。
あの時もっと話をしておけば、自分の気持ちをもっと伝えておけばと後悔もあります。
やはり気持ちは伝えられるときに伝えておくべきだと思いました。