初めてできた彼女との思い出:若きひの私は純粋すぎた
初めてできた彼女との思い出は私が18歳の時でした。
私と彼女は地元の友達で小、中学校が同じでした。
彼女を仮にAちゃんと呼ぶことにします。
私とAちゃんが付き合ったのは高校を卒業してから。
高校時代はたまに遊ぶ程度でした。
遊ぶといっても関東の片田舎で、することといえば友達数人と公園で話したり友達の誰かの家に遊びに行く程度でした。
Aちゃんもその数人の友達の中の一人という感じで、その時は私はまだAちゃんをことを特に意識はしていませんでした。
それから私は地元の高校を卒業して東京の大学に進学、Aちゃんは地元から専門学校に通っていました。
私は地元から大学に通えないこともなかったんですが、一人暮らしに憧れ、親に頼んで東京に部屋を借りてもらい地元には月に1,2度は実家帰る生活をしていました。
そんなある日、東京から地元駅に降り立ち実家に帰る私とAちゃんはばったり出会いました。
お互いの実家は目と鼻の先、帰る方向は一緒、バスに揺られること30分、バス停を降り、5分歩くとAちゃんの家、それを通り越した先に私の実家はあります。
その日も仲の良い友達同士、お互いの話は盛り上がりました。
お互いの学校のこと、親のこと、地元の友人のことや新しくできた友人のことなど話題がたくさんありすぎて話しきれませんでした。
彼女の家の前に着き、また話の続きをしようと約束しその日は別れました。
まだ当時はポケベルの時代。
ポケベルとはGoo辞書によると、ポケットに入るような小型の無線受信端末。
液晶画面に数字列や簡単な文字列などを表示でき、普通の電話機から呼び出してメッセージ文を送れるが、通話はできない。
つまり、そんな時代。
今みたいに話したいときに好きなだけ話したい相手と話すことは出来ない時代です。
当時の若い男女は直接会って次の約束を交わすか、相手の自宅に電話しなければなりません。
今と違ってめちゃめちゃお付き合いするのが大変な時代。
仮に若い男子が女の子の家に電話をして親父が電話に出ようものなら家じゅう大騒ぎです。
そうでなくても会話内容をダンボの耳で聴かれます。
気づいたら自分の周りに家族全員正座して座ってたなんてことが冗談抜きで起こります。
私と同世代の人は共感していただけると思います(笑)
若い男女が家族の詮索を避けて会うためには直接会ったときに次回の計画を練っておくことが必須なのです!
そう、私も家族に余計な詮索をされたくなかったのでシッカリと次回の予定を組んでAちゃんと別れました。
次回会うまで数日あります。
数日間東京の一人暮らしの部屋には戻らずに実家から大学に通い、自分の部屋の片づけでもするかと思い実家にとどまりました。
あくる日暇なので近所のコンビニを数件はしごしに出かけました。
当時のコンビニは漫画や雑誌読み放題です。
しばらく外出して家に戻ると母がニヤニヤにながら「Aちゃんから電話あったわよ。あんたから電話ほしいって、ニヤニヤ」といってきました。
電話してくるなんていったいどうしたんだ?予定変更かな?と思い母のニヤニヤを気にしつつ電話してみるとAちゃんが電話口に出ました。
どうしたの、予定変更?と私が訪ねるとAちゃんは○○君数日家にいるって言ってたでしょ、だから電話しちゃった、との返事が。
私は「会ったときに話せばいいんじゃないの?」というとAちゃんは今から会おうというので、何かあったのかと思い今から会うことにしました。
今、大人になって思えばAちゃんは私に気があることはすぐに分るのですが、当時18歳のチェリーボーイにはそういった大人な感情は全く分かりませんでした。
会って話してみるといつもと変わらずたわいもない話をして盛り上がりました。
ただいつもよりAちゃんは楽しそうな様子なのはチェリーにも分かりました。
そして、今度二人で上野の映画館に寅さんを観に行こうとなりました。
ご存じの通り寅さんは国民的映画ですがデートにはどうかな?という気もしますがチェリーにはおしゃれな映画なんて概念はありませんし、Aちゃんにしてみたら二人でお出かけするということが重要だったのでしょう。
家に帰ると母親に、ねぇ、どおだった?と聞かれ、うっせえな!と返すと、うっせえなじゃないわよ!何その口の利き方は!!と怒ってみせたあとに、Aちゃんお前に気があるんじゃないの?ニヤニヤ、と言ってきたので、ちげーよ!ただ公園で話してただけだよ、というと、あんたそれデートじゃない、2人で会ってたんでしょ?今度いつ会うのよニヤニヤ。
マジか!?俺もしかしてデートしてた!?じゃあ、映画観に行くってデートじゃん!これ2人で行くしマジ!デートじゃん!!と心の中でときめくチェリーでした。
が、母親にはそんなそぶりを一切見せずやり過ごすのでした。
しかし今でも当時のことを母は覚えており、あんたあの時嬉しそうだったな、あれからずっとニヤニヤしてたな、と言われます。
すると、そうそうお前ら2人ニヤニヤして飯食ってるから気持ち悪かったわと親父が話に加わります。
Aちゃんとデート当日、私はユナイテットアローズで買った緑の実寸大の胃袋がプリントされたTシャツにこれまた緑色のジーンズにコンバースを合わせ、髪型は当時ブルーハーツのボーカル、ヒロトに憧れてたので坊主頭、自分なりに最高におしゃれな格好で出かけました。
Aちゃんは当時流行った2人組のアイドル歌手ウィンクをモチーフにした白いフリフリしたワンピースに恥ずかしいのかTシャツを合わせ肌の露出を抑えたファッションにスニーカー。
2人で上野に向かいました。
この日私はAちゃんを初めて女性として意識してとても緊張していました。二人きりの時間、改めて彼女を見るとAちゃんは背が小さく目が大きくておちょぼ口のかわいい女の子でした。そう思うとドキドキしとてしまい、会話はぎこちなく空回りしているのが自分でも分かりました。
今日は○○君いつもと違うね?というので、そうかな?と返すと、「でも楽しい!」とくったくない笑顔で答えたAちゃんを見た瞬間、私は見えない矢が飛んできてTシャッツの胃袋を貫通し私の心臓を射抜きました。急激にAちゃんに女を意識した私は舞い上がってしまい、それ以降の記憶はあまり覚えていません。
しかしそんなさなかでも手を握ったことは覚えています。
どちらが先に言い出したのかはわかりませんがきっとAちゃんでしょう。
手をつなぎ上野の街を歩きました。
小さくて細い指やわらかい手でした。
Aちゃんとは何度かデートしましたが手をつなぐ以上のことはしませんでした。
純粋な私にはどうすればよいのかわからなかったのです。きっとAちゃんからお誘いのサインが送られていたのでしょうが見逃していたのかもしれません。
それからAちゃんとは自然消滅してしまいましたが、私にとってAちゃんとの関係は初彼女としての良い思い出となっています