私はどうしてもその子に「好きです」と言うことができなかった
私の初恋は、高校生のときでした。
遅いと思われるかもしれません。
中学生のときにも、好意を抱いていた女子はいました。
でもそれは「なんとなくいいな」と思うくらいで、今から考えると、とても「恋」と呼べるようなものではありませんでした。
中学生の時、男子3人で、お互い好きな女子が誰かを話す、という場面になりました。
私は好きでもない女子の名前をあげました。
また別の時には、クラスの男子に「○○君(私の名前)って○○さん(女子の名前)が好きなの?」と聞かれたことがありました。
私にはそんな意識はまったくありませんでした。
ですのでなぜそのように聞かれたのか、今となってはわかりません。
そして私の初恋は高校2年生のときです。
ちょっとぽっちゃり気味で(ゴメン)、クラスの中でも明るい女子でした。
その子が風邪で学校を休みました。
私は授業のノートを取り、その子に渡してあげました。
今度は私が風邪で学校を休んだ番です。
その子は「私、頭悪いからノートは取れないけど、こないだのお礼にシュークリームを手作りしたのであげるね」と、メモ付きのシュークリームをプレゼントしてくれました。
私と同じクラスの友人の男子。
やはり同じクラスの、別の女子のことが好きだ、と私に打ち明けてくれました。
「じゃあ、男子2人、女子2人の組み合わせで、私の家で勉強会開こうよ」と私は提案しました。
私の父親は大手の銀行員で、そこそこの稼ぎがありました。
おかげで、私は家の中に自分の個室(6畳)をもっていました。
ただ、父親は私が高校1年生のときに、45歳の若さで病死しています。
これはまた後ほど述べます。
そして勉強会を女子2人に提案したら、快く引き受けてくれました。
当時、REGALのスニーカーが流行っていて、ニセブランドまででていました。
高校は私服です。
私はニセのスニーカーをもっていました。
私が好きな女子は、本物のスニーカーをもっていました。
クラスの女子の中で、本物のREGALを履いていたのは、その女子1人だけでした。
その女子とは、高校1年生のときから同じクラスでした。
先ほど述べたように、私の父親は私が高校1年生の時に亡くなったのです。
そしてそのとき、クラスのみんなが私あてに手紙をくれました。
たぶん先生が言い出したことなのでしょう。
ですのでその女子からの手紙も、手元にあるのです。
高校2年生になるとき、クラス替えがありました。
私はその女子と同じクラスになれました。
1年生の時は特に異性として意識したことはありませんでした。
2年生になってから恋心を抱くようになったのですが、なにがきっかけだったのかは覚えていません。
そして私は高校2年生の時から視力が落ちて、メガネをかけるようになったのですが、初めてメガネをかけて登校した日、私が好きだった女子が「○○君(私の名前)、ちょっとメガネはずしてみて」といいました。
私がいわれるがままにメガネをはずすと、今度は「もう一回かけてみて」といわれます。その女子は「ふ~ん」といったきりで、似合うかどうかはもちろん、どんな感想をもったのか話してくれませんでした。
今この原稿を書きながらそんなエピソードを思い出しました。
シュークリームをくれたり、自宅に来てくれたり……考えれば「脈あり」だったのかもしれません。
当時私は日記をつけており、「○○さん、あなたのことが好きです」とノートに書いていました。
そして、ラブレターの下書きを書きました。
しかし、渡すことはできませんでした。
ましてや「好きです」と告白することもできません。
当時の私は、各科目のテストで、のきなみクラス1位を取っていました。
唯一ニガテなのが体育。
逆に言えばそれほど勉強ができたということです。
でも性格は内気。
結局その女子とは何の進展もないまま、自然消滅の形で離れていくことになりました。
私は高校生のとき、図書委員会の委員でした。
そしてあるとき、学年が1年下の女子と一緒に電車に乗りました。
家へ帰る方向が同じだったからです。
私はその後輩と話をしながら、こころの中で、「私はこの女子が好きなのだろうか」と自問自答していました。
特に惹かれるところがあったわけではありません。
でも素直な、性格のいい女子でした。
私は「理屈から恋愛に入るのではない。
『好きだ』というどうしようもない気持ちが先にわいてきて、それからその子と付き合いたいと思うようになるのだ」と考え、「いや、私はこの女子が本当に好きなのではないのだな」と思い直したのです。
たいていは男子だけでしたが、男子複数、女子複数で一緒に喫茶店に入ることもありました。
そして今でも覚えているのですが、喫茶店で私が、その初恋の相手ではない女子と握手していたのです。
これは写真に残っていたため、記憶に刻まれていました。
なぜ初恋の人に告白できないのに、好きでもない女子の手を握れたのでしょうか。
今でも不思議でしかたありません。
その時私はオーバーオールのジーンズを着ていました。
私はクラスの中で一番背が低く、別の女子から「○○君(私の名前)がオーバーオールを着ていると、まるで女の子みたい」と言われたことを覚えています。
高校生のとき、デートできていたら。私の人生は変わったでしょうか。
私の高校のクラスに、クラスメイト同士で結婚した人がいます。
今でも年賀状をやりとりしており、お互いに孫がいる歳になりましたが。
どうしてあのとき「好きです」って言えなかったんでしょう。
「初恋は実らない」というから、付き合ったとしても別れたのかもしれませんが。
結局のところ、私が付き合った女性は、生涯で今の妻ただ一人でした。