大学自体のあの事の甘酸っぱい思い出。別れは留年とともに。

私とA子との出会いは、どこにでもあふれているであろうありきたりな出会いだった。

あれは大学2年生のころ、普段ろくに授業も受けず、ただぼーっと過ごしていた私は、期末テストに向けた恒例の追い込みをやっていた。

普段なら自宅にこもりっきりで勉強をするものの、たまたま自宅の近くの道路の工事期間と重なり、集中できないと思い、入学して初めて山の上にある大学の図書館に足を運んだ。

普段はネットで情報を集める私だが、せっかくなので関連書籍を借りてきて、それを手元において勉強しようとその本を探しに行った。

普段通わない場所で目的のものを探すのはなかなかに至難の業で、やっとの思いでその1冊がありそうなブースにたどり着いた。

「あったあった。」と一安心してその本に手を伸ばしたとき、急に後ろから「○○くん?」とA子から声を掛けられた。

「○○くんもテスト勉強しているの?もしよかったら、一緒に勉強しない?」

入学依頼話したことは1回しかなく、その1回もどんな話をしたかと言えば、どの日本酒がおいしくて、どこに行けばおいしく楽しめるかという、勉学とはかけ離れた話題だった。

そんな話題しか話したことがないA(しかも、たった1回!?)子からの突然のお誘いは、私をひどく悩ませた。

普段大学に来ない私を誘う、A子の真意はなんなのだろうか。

そんな風に決めきれない様子でいると私に対してA子は「私のこと嫌い?一緒に勉強するだけだよ、なにか不都合でも?」とズルい目つきで私を見つめてくる。

ここで断れば男が廃る!となぜか発起した私は、図書館にいるにも大きな声で「ご一緒させて頂きましょう!」と答えていた。

いざ勉強をはじめると、普段授業を受けていない私はゼロから勉強を始めるため、遅々として進まないが、まじめに授業に通ってしっかりとノートを取っているA子は、どんどんと勉強を進めていく。

数時間一緒に勉強をしたもののそれぞれの出来の違いは歴然だったので、それを取り返すべく徹夜で勉強をしようと決心をし、自動販売機に行こうと立ち上がった。

そのときA子はおもむろに私の腕をつかみ、私の顔を引き寄せ耳もとで、「徹夜はだめ!そんなことするなら、もう飲みに行こう!」とささやいた。

徹夜がダメということは理解するものの、どういう思考回路を持っていれば、飲みに行くということになるのだろうか、全く意味が不明である。

とはいっても、これ以上勉強をしてもらちが明かないのは頭でわかっていたので、「分かった」と一言伝え、行きつけの日本酒バーに行くことになった。

日本酒バーで二人は、勉強の疲れがあったからか、いつも以上に飲みすぎ、酔いつぶれてしまった。

そんな状態になった二人は自然とそういう雰囲気になり、「自宅で一緒に勉強しよう」という名目でA子の家に行った。

「ちょっと待ってて」と言い、A子は着替えに自分の部屋に行った。

ちょっと酩酊気味の私はうつらうつらしていたところ、急に腕に温かさを感じた。

それはA子の肌だった。

一気に酔いが覚め、私はA子をきつく抱きしめて、「A子、付き合ってほしい。」と告白をした。

A子は「酔っているときに言われるのは嫌だけど、その気持ちは嬉しいよ」といって、私を強く抱きしめ返してきて、そのまま二人でベットで横になり、朝を迎えた。

翌朝になっても私の気持ちは変わっておらず、改めて告白をしたら、A子は改めて「よろしくお願いします。」と言って、お付き合いを始めることとなった。

お付き合いを始めたからといっても、忌まわしき期末テストが無くなることはもちろんなく、勉強する日々がまたやってきた。

これまでとは違い、ひとりで勉強するということはなく、彼女となったA子に手取り足取り教えてもらいながら、勉強を進めた。

こんな私を家族は、なかなか家に帰ってこないなと思っていたらしいが、工事の音がうるさいから外で勉強しているのだと相変わらず思っているらしく、それ以上の詮索とかはなかった。

そうして今までとは違う形で、幸せな気持ちで期末テストの時期を迎えることになった。

A子はこれまで真面目に授業に出て、予習・復習していたこともあり、どの科目も高得点&高評価で期末テストを終えたらしい。

一方私は今までにない幸せな気持ちで勉強を進めて、幸せな気持ちで期末テストを迎えたが、ことごとくどの科目もぎりぎりの点数で単位を貰うか、落第をしてしまった。

いつもであれば、非常にショックを受けるのだが、彼女が出来た私はそんなことを全く気にせず、A子との日々を楽しんでいた。

この後A子とは、横浜や新宿、大阪など本当にいろいろなところに旅行に行ったり、半同棲したりと色々な経験をしながら、2年間を過ごした。

大学卒業を迎える最後の期末テスト。

A子のおかげで私は授業にも欠かさず出席するようになっており、ノートもしっかりと準備していたので、これまでとは全く違う心持ちでテストに臨んでいた。

テストを迎える時の私の気持ちは、これまで以上に自信があるもので、高得点で最後の科目を飾ろうと意気込んでいた。

しかし結果は最悪。

最後2単位の試験に2点足りずに不合格となってしまい、落第することとなってしまった。

テストの結果のように私たちの関係も終わり、甘い思い出はすべて消えてしまった。